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Channel: ジロー's カフェ別館 小説「ステイケーション」
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第7章「記念日」

100 八月はいよいよ残すところあと二日。夏休みもついに終わり、しあさってには始業式が行われる。ジローは、毎年のことながら、悲しくなってくる。 学校が始まるからではなく、夏が終わるからだ。ジローの少年時代、唯一の特技は、水泳だった。校内水泳大会ではヒーローになり、プールで鬼ごっこをすれば、ジローから逃げられる友達はいなかった。...

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弟6章「一人旅」

92 テレビで高校野球の準決勝を見ながら、ジローはふと思いついた。海へ行こう、と。しかも、電車で。高校野球は、ラジオで聞けばいい。 すぐに、レジャーシート、ラジオとイヤホン、文庫本、メモ帳とペン、ろ過水を入れたペットボトル、長袖シャツをデイパックに放り込み、それを背負い、野球帽をかぶり、首に手ぬぐいを巻き、久しぶりにマウンテンバイクに乗り、駅へ向かった。...

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弟5章「ソウハツ」

74 ジローはケチである。時折、とんでもないものに、とんでもないカネをかけることもあるが、基本的にケチである。 ジローは、モモに勉強を教えるが、これもケチなためである。塾に通えば、今時、毎月何万円もとられるが、ジローが教えればタダだ。時に、ジローにも理解できない問題もあるが、そんなときは、ジローは「他の子もできないから、気にするな」などと、無責任に言い放つ。...

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弟4章「お盆休み」

61 お盆が近づいてきた。世間がお盆休みに入る前に、ジローは生徒会本部のメンバーに集合をかけた。毎年恒例の夏休み企画、民主主義実践強化訓練だ。ジローは、生徒会顧問でもある。 学校行事には、教師主導のものもあれば、生徒主体のものある。学校祭や球技大会などは、生徒会本部が中心となって、千人近くの人間を動かすのだ。...

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弟3章「夏の夜の」

34 学校が夏休みとはいえ、教師には何かと仕事がある。 生徒たちも、夏休みとはいえ、学校に出てきて勉強をする。 学校には、進路課というセクションがあって、主に生徒たちを大学に送り込むための企画を立てるのが仕事だ。 その進路課が生徒たちを遊ばせておくはずがない。ということは、教師も遊ばせておくはずがない。ジローも一年生の進学希望の生徒たちの英語の補習を担当するように言われていた。...

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弟2章「兄ちゃん」

20 モモとジローが、車で小一時間の実家に着いた頃は、すでにもう暗くなっていた。「ただいま」と二人が大きな声で言いながら、うちの中に入っていく。...

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弟1章「冷蔵庫」

1 見上げる青空の中央を飛行機が進み、白い直線を引いていく。ジローはその飛行機雲にそって、背泳ぎでゆっくり進む。太陽が熱く、まぶしいが、水の中では、それがかえって心地よい。...

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引き算な時期

教えるのが下手な教師の特徴は、教えすぎるところ。あれもこれも教えてしまい、時間が足りなくなり、生徒も消化不良になってしまいます。料理が下手なひとの特徴も似ています。食材や調味料を入れすぎるところ。お洒落も、そう。色や装飾が多すぎるとダサくなるようです。必要最小限のものを選ぶことが、最大限の結果を引き出すのです。選ぶことは、同時に、捨てること。そう、足し算じゃなくて、引き算。人生の前半は、足し算。人生...

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木曜のランチ

いつもは職員室で弁当を食べるのですが、木曜日だけは、学校の隅にひっそりとある部屋で。相談室です。南向きの窓際のソファにすわり、お気に入りの音楽をかけて。今日の弁当は、お好み焼き。職員室の電子レンジで少し温めて。デザートは、みかん。今日のお客さんは、女子二人。テスト前ということで、英文法を聞きにきました。いっしょに弁当を食べながら、藁半紙に書いて、説明しました。こんな相談なら、簡単。答えがあるのですか...

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